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第二章 速記のイノベーションを促進した三種の神器

(4)録音速記は速記の一種

テープ起こしは、以前、録音速記、録記と呼ばれていました。日本の速記学者、武部良明さんは、1955年発行の「国語速記概説」(上)の中で、手書き速記に対して機械速記という分野を認めました。その機械速記には、印字速記方式と録音速記方式の2つの方式があると書いています。
武部さんは、録音速記方式において大切なことを次のようにあげています。


『そこで録音速記方式を利用しての速記技術における第一の問題は明瞭な録音ということである。この場合、録音機そのものが最良の状態に整備されていること、発言者の口とマイクロフォーンとが適当な距離を保っていること、録音機の操作にあたって音量その他の調節が適当であること、などが必要である。実際にはその上に、発言者の音声がアナウンサーのようにマイクロフォーンに適していること、発言そのものも個々の発音、特に子音の発音が明瞭であること、発言に著しい遅速強弱がなく大体一定していること、発言者以外の発言その他の雑音が皆無に近いこと、なども要求されるのである。録音速記方式が、聴衆に向っての話や発言者が多数の場合の速記に適当でなく、口述速記のように発言者が録音や文字化に意を用い得る場合に適していると言われるのはこのためである。そこで欧米では録音速記方式を口述速記以外に利用する場合には、あとで文字化しやすいように発言を聞きながらそれをその場で次々と明瞭に復唱して録音する方法(ステノマスク)、記線速記方式または印字速記方式で一度速字化したものを口述することによって録音する方法(復演)などが行われている。また録音機の再生による反訳は、いかに断続や反復が可能であっても、高速度のタイプライターを利用しなければ実用にならないものである。それは普通文字で書き取ろうとすれば、長時間にわたってのリズムを無視した書記運動によって初めて能率が上がるのであり、実際にはその疲労にたえられないとされているからである。

もっとも、録音速記方式を用いての速記技術の利点の一つは、本来ならば一度しか聞くことができない音声による言語表出が何度でも再生できることである。しかし実際には、録音機がすべての音波をその通り再生するわけではないから、直接録音の再生による聴取の方が直接の聴取よりも一層むずかしくなっている。ピントのはずれた写真の細部がいくら見てもわからないように、一度聞いて聴取できないような音声は何度聞いても聴取できないのが普通である。また、録音速記方式を用いての速記技術においては速記方式運用技術そのものが割合に容易だとされている。しかしそれに付帯する技術として録音機の修理法や整備法に熟達すること、タイプライターが耳で聞きながら打てる技術を習得し熟練すること、などに相当の期間と努力とを擁するのである。これらの点をあわせ考えれば、記線速記方式または印字速記方式を用いての速記技術にもそれぞれ有利な点が見られるのであり、ここに三者共存し得る根拠も存するわけである。』


武部さんの考え方は、現在のIT速記時代からずれた点もあるが、本質をとらえているところもあり、よく考えてみる価値があります。速記現場では実際に、録音メモを適切にとることが大切です。(つづく)

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